2026年1月9日(金)、IEEE EMC Societyの国内組織であるJapan-Joint Chapter及びSendaiChapter主催の講演会が機械振興会館(東京都港区)にて開催され、同学会の最優秀論文賞を受賞した本学情報学部の衣川昌宏准教授が記念講演を行いました。
衣川准教授は、奈良先端科学技術大学院大学の林優一教授と発表した論文が、環境電磁工学分野における世界最高峰の国際会議の一つ 「EMC Europe 2025(イー・エム・シー ヨーロッパ 2025)」において最優秀論文賞(Best Paper Award)を受賞されています。(参考記事:https://www.fukuchiyama.ac.jp/news/44465/)
■講演要旨
講演では、衣川准教授がこれまで取り組んできた「電磁波を利用した情報セキュリティ研究」について、研究の出発点から最新の成果までを紹介しました。コンピュータや電子機器の内部には、情報を処理する小さな電子回路(IC)が数多く使われています。これらは通常、安全に設計されていますが、強い電磁波が加わることで、意図しない影響を受ける場合があることが分かってきました。これまでの研究では、機器に不正な回路を仕込む「ハードウェアトロージャン」による情報漏えいだけでなく、機器を一切改造せず、外部から電磁波を照射するだけで内部の情報が読み取られてしまう可能性があることを明らかにしてきました。今回受賞の対象となった研究では、この知見をさらに発展させ、2種類の電磁波を同時に照射することで、コンピュータ内部に誤った情報を送り込めてしまう新たな脆弱性を実験的に示しました。講演では、その仕組みと社会への影響について分かりやすく解説しました。
■これからのAI・情報化社会への貢献
AIや自動運転、スマート家電、社会インフラの高度なコンピュータ制御など、私たちの生活は今後ますます電子機器と電磁環境に依存していきます。今回明らかになった脆弱性は、特定の製品だけの問題ではなく、将来のAI応用機器や情報化社会全体の安全性を考える上で重要な課題を示しています。本研究は「危険性を指摘すること」が目的ではありません。電磁波による見えない脅威を正しく理解し、それに対抗する安全な設計技術や防御技術を開拓することが最終的な目標です。本学で進めている研究は、安心してAIやデジタル技術を利用できる社会の実現に向けた、基盤技術の一つとして貢献していきます。
衣川准教授はIEEEが発行する機関誌「Electromagnetic Compatibility Magazine」(4th Qtr 2025)に受賞者として紹介されています。
https://magazines.ieee.org/emc/library/item/4th_qtr_2025/4313771/
福知山公立大学では、最先端の研究成果を社会と共有し、地域とともに未来を考える大学でありたいと考えています。一見すると専門的で難しく見える研究も、実は市民の皆さまの暮らしの安全や安心と深く結びついています。今回の受賞と記念講演を通じて、本学が世界的な研究成果を生み出しつつ、その意義を分かりやすく社会に伝える役割を果たしていることを、多くの方に知っていただければ幸いです。今後も、市民に愛され、信頼される大学として、地域社会とともに歩みながら、未来の安全を支える研究と人材育成に取り組んでいきます。
