学長メッセージ
アイデンティティ確立のための「青年期」へ 開学― 10 周年にあたって―
福知山公立大学 学長川添 信介
2026年に福知山公立大学は公立大学として開学して10周年となりました。設立した福知山市は言うまでもなく、さまざまなご関係の方々のご支援により、本学は北近畿地域に本拠をおく、2学部1研究科を擁する高等教育機関として発展することができました。これは多くの方々のご支援によるものであり、こころより感謝申し上げます。
開学以来、本学は「市民の大学、地域のための大学、世界とともに歩む大学」を基本理念としてきました。「世界とともに歩む」という面ではまだ不十分ですが、この10年間で「市民の大学、地域のための大学」としては着実な歩みをすすめて、市民社会で責任を果たす人材を育成するとともに、地域社会の課題解決に挑戦してきました。立地する福知山市や北近畿地域への貢献にとどまらず、全国から本学に集い全国で活躍する卒業生は、それぞれの地域社会に貢献しています。この10年で本学は一定の存在感を発揮してきたと自負しています。
しかし、18歳人口の急激な減少をはじめとする高等教育をめぐる情勢の変化、生成AIに代表される新たな技術の進展と社会インフラとしての普及、さらには不安定さを増大させている国内外の政治的・社会的状況などは、本学にとっても課題となり、それを乗り越えるチャレンジをしなければなりません。そして、11年目をスタートさせた2026年に学士課程教育の刷新を行ったのも、社会全体とりわけ地域社会が求める大学の姿を追求しようとしたチャレンジの一つです。すなわち、「情報学を基盤とした地域協働型教育」と「汎用的学修能力の育成」という新しく掲げた2つの教育目標は、情報学と地域協働を結びつけることと卒業後の長い人生で学び続けるちからを身につけること、この2つの学びの重要性は不透明な未来においても変わることはないと考えられるからです。
他方で、教育・人材育成という間接的な地域貢献だけではなく、地域のさまざまなアクターとの協働や連携によるより直接的な貢献についても、これまでの10年間にもまして進展・深化させねばなりません。第2期中期目標でその実現が掲げられた「福知山モデル」は、大学だけでもなく、地域社会だけでもなく、その両者がともに発展してゆくモデルです。少子化と高齢化する地域社会を活性化させ「幸せを生きる」(福知山市民憲章のことば)ことのできる場とするには大学の持つ知的資産の活用が不可欠であることを、福知山・北近畿という場で「福知山モデル」として示していかねばなりません。
これからの10年は、本学にとっていわば「青年期」となるでしょう。青年はさまざまな悩みや困難に巡り合いながら、そのなかでアイデンティティを確立していきます。しかし、人が自己を確立するということ自体が共同体の中でしか可能ではありません。本学も地域社会という共同体の中でしか「青年」となることはできません。「地域のための大学」である福知山公立大学は「地域によって育てられる大学」なのです。
開学10年目に公立大学法人福知山公立大学の理事長・学長として再任されたこの機会に、多くのみなさまに本学へのご理解とこれまで以上のご支援をあらためてお願いいたします。