2025年10月26日(日)、TKP東京駅カンファレンスセンター(東京都中央区)で開催された深井保健科学研究所主催の第24回コロキウムで、地域経営学部医療福祉経営学科の岡本悦司教授が講演しました。
同コロキウム(ラテン語で“研究会”の意)は、歯科関係者を中心に毎年、医療政策に関するトピックをテーマに開催されており、24回目となる今回は「日本のUHC・歯科UHCの進化と世界への貢献」をメインテーマに、40人余りの研究者や歯科関係者らが参加しました。UHCとは universal health coverage(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)、すなわち国民皆保険制を指し、WHOがSDGs(sustainable development goals、持続可能な開発目標)で掲げる全加盟国が達成すべき目標の一つとされています。
日本は1961年に皆保険制を達成し、現在では世界各国のUHC構築を支援しています。岡本教授は前任の国立保健医療科学院において、途上国の政府関係者を対象としたUHC研修の責任者を務めた実績があり、今回の登壇につながりました。
岡本教授は、「日本のUHCが直面する試練~高額療養費は破滅的医療費負担から家計を守りぬけるか」というテーマで講演を行い、「UHCの重要な機能は、全国民に医療を提供するだけでなく、家計を破滅的な医療費負担から保護することにある」と述べました。また、「患者負担に限度を設ける高額療養費制度は半世紀前からセーフティネットとして機能してきた。高額な抗がん剤でも、貧富を問わず投与できたのも高額療養費制度のおかげだったが、2025年に入り負担限度の引き上げが医療政策上の重要なアジェンダとして浮上した。今年8月からの引き上げは見送られたものの、高額療養費制度の在り方を検討する検討会が患者団体も含めて設置された」と説明し、「医療費と所得との関連を傷病別に分析したデータが皆無であるという課題も明らかになった」と述べました。
岡本教授はさらに、「過去の医療費と所得の関連を分析するテーマで科研費が今年度採択され、このほど厚生労働省より統計法に基づくデータ提供が許可された。今後、提供されたデータを分析し、高額療養費制度の議論に有益なエビデンスを提供したい」と結びました。
