本学情報学部の衣川昌宏准教授と奈良先端科学技術大学院大学の林優一教授が発表した論文が、環境電磁工学分野における世界最高峰の国際会議の一つ 「EMC Europe 2025(イー・エム・シー ヨーロッパ 2025)」において、最優秀論文賞(Best Paper Award)を受賞しました。
本賞は、会議に投稿された278編の論文の中から最も優れた1編にのみ贈られる栄誉であり、日本からの電磁波セキュリティ分野での受賞は今回が初めてです。
北近畿唯一の情報系学部を持つ本学から世界的に高く評価された成果が生まれたことは、福知山公立大学の研究力と国際的プレゼンスを大きく示す快挙となりました。
受賞論文
Arbitrary Data Injection into CMOS Integrated Circuits via Dual-Wave Electromagnetic Irradiation
(日訳:2波の電磁波を照射することによるCMOS集積回路への任意データ注入)
Masahiro Kinugawa(福知山公立大学)、Yuichi Hayashi(奈良先端科学技術大学院大学)
研究の概要と社会的意義
本研究では、「二つの異なる周波数の電磁波を組み合わせて照射することで、CMOS集積回路に安定的かつ精密に任意の論理状態を注入できる『二波注入技術』」を世界で初めて実証しました。
この成果により、従来は困難であった「外部からの確実なデータ注入」が可能となり、IoT機器や組込みシステムに潜む深刻なセキュリティ脆弱性が明らかになりました。実際に、Raspberry Pi 4を用いた実験では、Linux OSのデバッグインターフェースに対し物理的な接触なしにASCII文字列(シェルコマンドを含む)の遠隔注入に成功しました。
この研究は、電磁波を悪用した新たなサイバー攻撃の現実性を示すとともに、今後のAIoT社会における情報機器の安全性確保に向けて、より強固な電磁防御技術の開発を促す重要な成果です。
受賞者コメント
衣川准教授は、「地方大学からでも世界をリードする研究成果を発信できることを証明できたことを嬉しく思います。本成果が今後のセキュリティ対策や産業界への応用につながり、地域社会から世界へと貢献できれば幸いです。」と語っています。