2026.10.01

地域に出て、見て、聞いて、調べて、考える 
1年次から始まる福知山公立大学の「地域協働演習」

地域協働型教育
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福知山公立大学では、今年度から新カリキュラムのもと、情報学部と地域経営学部の1年生が共に学ぶ「地域協働演習」が始まりました。

この授業のフィールドは、大学の教室だけではありません。学生たちは大学で様々な調査手法の基本を学んだ後、福知山をはじめとする地域に出かけ、まちの状況を計測したり、地域の方の話を聞いたり、現場のデータを収集しながら、地域社会について理解を深め、地域が抱える課題について考えていきます。

「地域にはどのような課題があるのか」
「その背景には、どのような人々の暮らしや地域特有の事情があるのか」
「自分たちの学びは、地域とどのようにつながるのか」

地域協働演習は、そうした問いに1年次から向き合う、本学らしさが表れた授業です。

10名の教員が、それぞれの視点で地域をフィールドに

地域協働演習では、10名の教員が分担して授業を担当しています。教員ごとに専門分野や持っているスキルは異なります。だからこそ、学生が出会う地域の姿も一つではありません。まちづくり、環境、観光、産業、教育、防災、データ活用、地域コミュニティなど、地域というのはさまざまな切り口から理解することができ、それぞれに課題もあります。学生たちは、まちのデータを分析しフィールドで地域の現場を理解しながら、大学で学ぶことと社会や地域とのつながりを少しずつ実感していきます。

この授業で大切にしているのは、最初から正解を探すことではありません。適切にデータを読む力をつけ、地域に出て、自分の目で観察し、自分の耳で聞き、生のデータを収集して分析すること。そして、そこから自分なりの問いを持って、考えることです。

基盤教育院長/教授渋谷 節子

活動紹介① データで地域の「集まりの場」を読み解く
桃映地域公民館での公民館利用実態調査

小山元孝教授、大谷杏准教授が担当するチームでは、「集まりと場づくり」をテーマに、福知山市の公民館をはじめとした地域住民が集う公共施設の利用実態について考えています。
フィールドワーク先は、桃映地域公民館です。学生たちは、テクノロジーを用いて公民館の利用状況を整理・分析し、さらに聞き取り調査の結果をグラフやマップなどで可視化することに取り組んでいます。

公民館は、地域の人が集い、活動し、つながるための身近な拠点です。一方で、どのような人が、どのような目的で、どの時間帯に利用しているのかを把握することは、今後の公民館運営を考えるうえで重要な手がかりになります。
このチームでは、まずMicrosoft 365やteamsなどの基礎的なツールの使い方、データの可視化、フィールドワークでのデータ採取について学びました。その後、桃映地域公民館を訪問し、公民館職員などから地域や公民館運営の現状、課題について話を聞きました。
学生たちは、入館者データを表やグラフに整理し、そこから読み取れること、読み取れないことを考えます。さらに、データだけでは明らかにできない点については、公民館職員や利用者へのインタビューを行い、地域の実感や利用者の声にも耳を傾けます。

「どのような人が公民館を利用しているのか」
「利用状況から、地域のどのような特徴が見えてくるのか」
「データでは分からない利用者の思いやニーズは何か」
「公民館が地域の集まりの場として、さらに活用されるには何が必要か」

学生たちは、こうした問いに向き合いながら、公民館の利用状況を可視化し、調査から見えてきた課題や仮説を整理していき、最終的には、調査内容をまとめ、発表用のポスターやスライドを作成し、成果報告を行いました。

学びのポイント

この活動で学生が身につけるのは、単にデータを集計する力だけではありません。公民館運営の向上という、正解が一つに定まらない問いに対して、データを軸に考える力を育てていきます。
地域の声とデータを組み合わせることで、学生たちは「地域を見る」だけでなく、「地域を読み解く」経験を重ねています。

学生の声

「現場に行って話を生の声を聞くことができ、課題をリアルに感じることができました。」
「数字だけでは分からないことがあり、実際に話を聞くことの大切さを感じました。」

教員の声

「公民館という身近な地域の場を題材に、データを使って地域課題に迫ることをめざしています。」
「地域の集まりの場を考えることは、これからの地域コミュニティのあり方を考えることにもつながります。」

小山 元孝 教授
大谷 杏 准教授

活動紹介② ICTを使って、身近な自然を記録する
三段池公園での生物・環境調査

才木常正教授・吉田誠講師が担当するチームでは、「環境保全と生物多様性」をテーマに、福知山市内の自然公園における自然環境や生物の分布について学んでいます。
フィールドワーク先は、三段池公園です。学生たちは、ICT技術を活用して、園内の生物や環境データを記録し、可視化する活動に取り組んでいます。

三段池公園は、市民に親しまれている身近な自然空間です。園内には、動植物の生息環境や、季節ごとの自然の変化が見られます。このチームでは、そうした身近な自然に目を向けながら、生物多様性や環境保全について理解を深めています。

授業では、情報機器を活用した生物の観察・記録手法や、環境計測の基礎、計測データの分析方法を学びます。学生たちは、フィールドワークの準備を行ったうえで三段池公園を訪れ、生物や環境の調査を行いました。
活動では、園内で見られる生物を記録したり、気温、明るさ(照度)などの物理環境を計測したりします。集めた情報は、地図やグラフとして整理し、園内の自然環境を分かりやすく可視化していきます。

「公園にはどのような生きものがいるのか」
「生きものは園内のどの場所に多く見られるのか」
「気温や照度などの環境条件は、場所によってどのように違うのか」

「ICTを使うことで、自然をどのように記録できるのか」
「身近な自然を守るために、どのような情報が役立つのか」

身近な自然を観察することは、環境保全や生物多様性について考える第一歩です。

学生たちは、観察し、記録し、整理することを通じて、地域の自然をより深く理解していきます。

学びのポイント

この活動では、自然観察とデータ活用の両方を学びます。学生たちは、実際に公園を歩き、生きものや環境を観察しながら、ICTを使って、地域の「いま」を調べ、記録する方法を身につけます。
身近な自然をただ眺めるのではなく、記録し、整理し、可視化することで、地域の環境をより深く理解することにつながります。

学生の声

「身近な公園にも、よく見ると多くの生きものがいることに気づきました。」
「ICTを使って自然を記録することで、環境を客観的に見ることができました。」

教員の声

「身近な自然をフィールドに、生物多様性や環境保全について考えるきっかけにしてもらいたいです。」
「ICTを活用することで、自然環境を定量的に把握・可視化し、地域の理解につなげることができます。」

才木 常正 教授
吉田 誠 講師

情報やデータを手がかりに、地域を読み解く

今回紹介した2つの活動に共通しているのは、地域で見聞きしたことに加えて、データや情報を活用して地域を考えている点です。
桃映地域公民館での活動では、公民館の利用状況をデータとして整理し、地域の集まりの場のあり方を考えています。三段池公園での活動では、生物や環境を記録し、地域の自然を地図やグラフで可視化しています。

扱うテーマは異なりますが、どちらの活動も、地域の現場で得た知識と科学的データを組み合わせながら、地域を多面的に理解しようとする取り組みです。
これは、情報学部と地域経営学部の学生がともに学ぶ地域協働演習ならではの特徴です。
情報学部の学生にとっては、データや情報技術を社会の中でどう生かすかを考える機会になります。地域経営学部の学生にとっては、地域の現場を客観的かつ多面的に捉え、まちづくりや地域政策、地域資源の活用を考える入口になります。
同じ地域を見ても、学生によって発見することは異なります。データに注目する学生もいれば、人の動きや地域のつながり、自然環境に関心を持つ学生もいます。異なる視点が集まることで、地域の見え方はより立体的になります。

学生コメント

「データで見た地域と、実際に歩いて見た地域を比べると、新しい発見がありました。」
「情報学の学びが、地域の課題を考えることにつながると感じました。」

1年生だからこそ、地域から学ぶ

地域協働型教育は、専門的な知識を十分に身につけた上級生だけが取り組むものではありません。入学したばかりの1年生が、大学での学びの入口として地域と出会うことに大きな意味があります。

地域に出ると、教室で学ぶ知識が社会とつながっていることに気づきます。統計データ等から得られる知識を元に、自分の目で現場を観察し、地域の方の話を聞き、さらにICTを活用して現場で取得した生のデータを分析することで、新たな発見があるかもしれません。また、自分とは違う立場や考え方に触れたり、グループで活動する中で、他者と協力して考える難しさや面白さも経験します。

地域協働演習で育まれるのは、知識だけではありません。

地域を見る力。
人の話を聞く力。
情報を整理する力。
情報を適切に理解する力
自分の考えを伝える力。
仲間と協働する力。
そして、答えのない問いに向き合う力です。

これらは、大学での4年間の学びを支える大切な力になります。

その他の活動はこちら

地域協働演習では、今回紹介した2つの活動のほかにも、10名の教員がそれぞれの専門や視点を生かし、多様なフィールドで課外活動を行っています。

各活動の内容は、以下のリンクからご覧いただけます。

地域と大学がつながる学び

地域協働演習は、学生にとっての学びの場であると同時に、大学と地域がつながる機会でもあります。

学生たちは、地域の方々の話を聞き、地域社会に触れながら、福知山や北近畿地域への理解を深めていきます。地域の皆さんにとっても、学生の新しい視点や素朴な疑問が、地域を見つめ直すきっかけになるかもしれません。

本学は、地域の皆さんとの関わりの中で学生を育て、学生の学びを地域に還元できる大学をめざしています。

地域協働演習を通じて、学生たちは地域から学びます。そして、その学びをもとに、地域の未来をともに考えていきます。

地域とともに育つ大学へ

地域協働演習は、福知山公立大学の新カリキュラムを象徴する授業の一つです。

1年次から地域で学ぶ。
地域の人と出会い、関わり、理解する。
情報を集め、考え、仲間と話し合う。
そして、自分の学びと社会とのつながりを見つけていく。

この授業を通じて、学生たちは少しずつ「地域とともに学ぶ」姿勢を身につけていきます。

福知山公立大学は、これからも地域をフィールドに、地域とともに学び、地域とともに成長する大学として、実践的な教育を進めていきます。