2026.10.16

「AIって面白そう」から、約900人中2位へ。
福知山で広がった中村蓮さんの学び

研究紹介 学生の活動 教員インタビュー 学生インタビュー 受賞・採択
#AI

「高校生の頃は、これをやりたいというものが、まだはっきり決まっていなかったんです」

そう振り返るのは、福知山公立大学情報学部2年生の中村蓮さん(情報学部 野村修研究室)です。

高校時代からAIには興味があったものの、本格的に学び始めたのは大学に入ってから。そんな中村さんが2026年夏、東京大学大学院工学系研究科 松尾・岩澤研究室が主催する「Deep Learning基礎講座 2026 Spring」の最終課題で、約900人の受講者の中から2位という成績を収め、優秀賞を受賞しました。

そして9月14日。中村さんは優秀生交流会のため、東京大学本郷キャンパスへ。大学院生や社会人受講生らとともに、自らの取り組みを発表しました。

福知山から東京へ。高校時代にはまだぼんやりとしていた「情報系が好き」という思いは、大学での出会いと挑戦を重ねる中で、少しずつ「研究したいこと」へと変わり始めています。

東京大学で、自分の取り組みを発表する

優秀生交流会では、講座で優秀生に選ばれた受講生らが集まりました。その中で、自らの最終課題について発表を依頼されたのは中村さんを含む3人。会場では専門的な質問も次々と投げかけられました。

「結構、細かく質問されました」

そう話す中村さん。発表した内容は、最終課題で試した手法や、その結果についてです。ほかの発表者の中には大学院生や社会人として学ぶ受講生もいました。学部2年生の中村さんにとっては、自分より経験を積んだ人たちと同じ場に立つ機会となりました。

発表後には、優秀生同士で約1時間の交流もありました。最終課題にどんな方法で取り組んだのかを語り合ったほか、講座の監修者を交え、AIについて踏み込んだ話をする時間もあったといいます。

そこで中村さんが特に刺激を受けたのは、周囲の参加者たちの「その後」でした。

「今回の講座が終わった後も、もう次の内容に進んでいる人がいて。自分も頑張ろうかな、と刺激を受けました」

受賞して終わりではなく、次の学びへ向かう。同世代や先を行く人たちとの出会いが、中村さんに新しい目標を与えました。

高校時代は、「情報系が好き」くらいだった

今ではAIを使った研究に取り組んでいる中村さんですが、高校時代から進路が明確に決まっていたわけではありません。

「高校の頃は、これをやろうという興味のある分野がなかなか思いつかなくて。情報系が得意というか、好きだったので、とりあえず情報系に行こうかな、という感じでした」

沖縄県出身の中村さん。福知山公立大学も、受験を考えるまでは知らなかったといいます。

一方で、現在につながる小さな種はありました。高校ではサイエンス部に所属し、イモリの「学習」や「認知」に関する実験に取り組んだ経験があります。

「認知にも興味があって、AIにも興味がある。そのあたりは今につながっているのかもしれません」高校時代の研究と、現在取り組んでいるAI。一見別々に見える興味が、大学に入って少しずつ結びついていきました。

大学に入って、「どう進めばいいか」が見えてきた

転機の一つになったのが、入学後に参加したゼミ紹介でした。

野村先生の研究紹介を聞き、「AI、面白そうだな」と感じた中村さん。入学当時にあった制度を利用して、1年次から野村研究室で学び始めました。

中村さんは、この経験についてこう振り返ります。

「1年生から野村研究室で学べたのは結構大きかったと思います。どう進めばいいか分からなかったので、そこを教えてもらえたのは大きかったです」

先生からすべてを教えてもらう、というわけではありません。興味のある分野について相談し、学ぶ方向を定め、その先は自分で調べ、試していく。その繰り返しです。

野村先生は「小さい大学なので、本当に意欲があれば、ゼミという形でなくてもいつでも来てほしい」と話します。
学生と教員の距離が近く、「やってみたい」を相談できること。その環境も、中村さんの挑戦を後押ししてきました。

※本記事は中村さんの入学当時の制度に基づく内容です。

「これでダメなら、次を試す」――積み重ねた試行錯誤

Deep Learning基礎講座の最終課題で中村さんが選んだのは、脳波データから、その人が見ていたものをAIで判別する課題でした。

動物や食べ物、車などの画像を見たときに得られた脳波データを使い、「何を見ていたのか」を5つのカテゴリーに分類します。ノイズが多く含まれる難しいデータでしたが、中村さんはさまざまな方法を試し、基本的なモデルと比べて判別精度を大きく向上させました。

特徴的だったのは、一つの方法に絞らなかったことです。

画像とテキストを関連付けて学習する「CLIP」などの技術を取り入れたり、複数の方法を組み合わせたり。さらに、「動物」という大きなくくりだけでなく、その中の細かな分類にも着目して学習方法を工夫しました。

試して、結果を見る。うまくいかなければ別の方法を試す。その繰り返しでした。

AIの学習には時間がかかります。授業の空き時間や授業前に研究室へ足を運び、計算を開始。授業を受けている間にコンピューターに学習を進めさせ、終わった後に結果を確認することもありました。

研究室に整備されていた高性能なコンピューターも活用しながら、試行錯誤を重ねていきました。

最初から「2位」を確信していたわけではありません。
いろいろ試して、少し良くなったら、また次を試す。その積み重ねの先に、約900人中2位という結果がありました。

大学の「自由な時間」を、自分の挑戦に使う

中村さんが大学生活について感じている、高校時代との大きな違いがあります。
「思っていたより自由な時間がありました。それで、こういう活動もできたと思います」
もちろん、何もしなくても何かが起こるわけではありません。

講座の課題に取り組んだのも、授業の空き時間を見つけ、自分で研究室へ行ったから。研究室に参加したのも、入学後の紹介を聞き、「やってみたい」と動いたからでした。

高校時代の中村さんに、明確な研究テーマがあったわけではありません。
「情報系が好き」。出発点は、それくらいでした。

大学で先生と出会い、AIを学び、学外の講座に挑戦し、今度は東京大学でほかの優秀生たちと研究について語り合う。
大学に入ってからの一歩一歩が、次の一歩につながっています。

次は、「自分の研究」で外の世界へ

中村さんは現在、野村先生のもとで、人間の認知とAIの情報処理に関わる研究テーマに取り組み始めています。
まだ2年生ですが、野村先生は「できれば学会発表や論文執筆まで進んでほしい」と期待を寄せています。

さらに、2027年2月に開催予定の国際会議で、研究成果を発表できないかという話もすでに出ています。英語での発表も見据え、中村さんは現在、TOEICの勉強にも取り組んでいます。

大学卒業後についても、大学院への進学を視野に入れています。高校生の頃にはまだ見えていなかった道が、今は少しずつ具体的になってきました。
約900人中2位という結果は、その途中にある一つの出来事です。

「AIって面白そう」

その小さな興味から始まった中村さんの大学生活は、福知山で先生や研究環境と出会い、自分から一歩を踏み出すことで、大きく広がってきました。

大学は、すでにやりたいことが決まっている人だけが行く場所ではありません。
興味のあることに近づいてみる。先生に話を聞いてみる。やったことのないことに挑戦してみる。
その先で、自分でも想像していなかった「やりたいこと」が見つかることがあります。

中村さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

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